家を建てたら、ほぼ全員が加入する火災保険。住宅ローンを組む場合は、金融機関から加入を求められるので必須といってもいいでしょう。でも、この火災保険料が建物の構造によって大きく変わることを知っている人は意外と少ないかもしれません。
木造で建てるか、鉄骨造で建てるか、RC造(鉄筋コンクリート造)で建てるか。この選択によって、火災保険料は年間で数万円、30年間で100万円以上もの差が生まれることがあります。
「木造は火事に弱いから保険料が高い?」「RC造なら保険料は安くなる?」「地震保険も構造で違うの?」実際のところ、どうなのでしょうか。
火災保険は、家を持っている間ずっと支払い続けるコストです。建築費だけを見て構造を選んでしまうと、後から「こんなに保険料が違うなんて知らなかった」と後悔することになりかねません。
この記事では、構造別の火災保険料の違い、保険会社がどう構造を評価しているのか、地震保険の仕組み、保険料を抑える方法まで、家づくりで知っておきたい保険の話を詳しく解説していきます。
建築費だけでなく、長期的なランニングコストまで考えた賢い家づくりのために、構造と保険料の関係を理解しておきましょう。
※保険料だけでなく、木造・鉄骨造・RC造の建築費や耐用年数の違いをまず把握したい方は、こちらの比較記事を参考にしてください。
火災保険の基本と構造級別の仕組み
火災保険は、火災だけでなく、落雷、風災、雪災、水災など、さまざまな自然災害から建物と家財を守る保険です。万が一の時に建物を再建したり、修理したりする費用を補償してくれます。
保険料を決める要素はいくつかありますが、その中でも大きな影響を与えるのが「構造級別」という区分です。
建物は燃えやすさや災害への強さによって、「M構造」「T構造」「H構造」の3つに分類されます。Mが最も保険料が安く、Hが最も高くなります。
M構造(マンション構造)
RC造(鉄筋コンクリート造)、SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)のマンション。コンクリートで囲まれているため、火災に強く、延焼のリスクも低い。
T構造(耐火構造)
RC造の一戸建て、鉄骨造の一戸建て(準耐火建築物)、木造でも耐火建築物または準耐火建築物の認定を受けたもの、省令準耐火構造の木造住宅。
H構造(非耐火構造)
上記以外の建物。一般的な木造住宅の多くがこれに該当。
つまり、同じRC造でも、マンションなら最も安いM構造、一戸建てならT構造になります。木造は、省令準耐火構造などの対策をしていればT構造、そうでなければH構造という区分です。
この構造級別によって、保険料は大きく変わります。H構造の保険料を100とすると、T構造は約50~60、M構造は約40~50程度。つまり、H構造はM構造の2倍以上の保険料がかかることもあるのです。
木造住宅の火災保険料
一般的な木造住宅は、H構造に分類されることが多く、火災保険料は3つの構造の中で最も高くなります。
例えば、建物の保険金額を2000万円に設定した場合、関東地方の木造住宅(H構造)の火災保険料は、年間で約3万円~5万円程度が相場です。補償内容や保険会社によって幅がありますが、かなりの負担になります。
30年間で計算すると、90万円~150万円。決して小さくない金額ですよね。
ただし、木造でも工夫次第で保険料を抑えることができます。それが「省令準耐火構造」です。
省令準耐火構造とは、建築基準法で定める準耐火構造に準ずる防火性能を持つ構造のこと。具体的には、隣家などから火をもらいにくい「外部からの延焼防止」、火災が発生しても一定時間部屋から火を出さない「各室防火」、万が一部屋から火が出ても延焼を遅らせる「他室への延焼遅延」という3つの特徴を持っています。
大手ハウスメーカーの多くは、この省令準耐火構造を標準仕様または選択可能な仕様として提供しています。2×4工法(ツーバイフォー)は構造的に省令準耐火構造の基準を満たしやすいため、多くのメーカーが対応しています。
省令準耐火構造の認定を受けると、H構造からT構造に格上げされ、保険料は約半分になります。年間3万円だった保険料が1.5万円程度になれば、30年で45万円もの節約になります。
省令準耐火構造にするための追加費用は、一般的に30万円~50万円程度。保険料の節約分を考えると、10年程度で元が取れる計算です。しかも、実際の火災安全性も高まるので、検討する価値は十分あります。
鉄骨造住宅の火災保険料
鉄骨造住宅は、基本的にT構造に分類されます。軽量鉄骨造も重量鉄骨造も、準耐火建築物の基準を満たしていれば、T構造として扱われます。
建物の保険金額2000万円の場合、鉄骨造(T構造)の火災保険料は、年間で約1.5万円~2.5万円程度。H構造の木造住宅と比べると、半分程度の負担で済みます。
30年間では45万円~75万円。木造(H構造)と比較すると、45万円~75万円も安くなります。
大手ハウスメーカーの鉄骨造住宅は、ほぼ確実にT構造の基準を満たしているので、契約時に構造を確認しておけば問題ありません。
鉄骨造の場合、建物そのものの価格は木造より高くなりますが、火災保険料は安くなる。この長期的なバランスも、構造を選ぶ際の検討材料になるでしょう。
RC造住宅の火災保険料
RC造(鉄筋コンクリート造)の一戸建て住宅は、T構造に分類されます。鉄骨造と同じ区分ですね。
建物の保険金額2000万円の場合、RC造(T構造)の火災保険料は、年間で約1.5万円~2.5万円程度。鉄骨造とほぼ同水準です。
ただし、RC造は建物の評価額が高いため、保険金額そのものが高く設定されることが多くなります。木造で2000万円の評価額の建物が、RC造では3000万円~4000万円になることもあります。
保険金額3000万円で計算すると、年間保険料は約2万円~3.5万円程度。木造(H構造)と比べれば安いですが、保険金額が高い分、総額ではそれなりの負担になります。
30年間で60万円~105万円程度。木造(H構造)の90万円~150万円と比べると、やはり安く抑えられます。
RC造の最大のメリットは、火災に対する安全性の高さです。コンクリートは燃えないので、万が一火災が発生しても、建物の躯体は残ることが多い。修復費用が抑えられる可能性があります。
また、RC造は火災への強さに加え、中古市場での資産価値(リセールバリュー)が落ちにくいという特徴もあり、長期的な資産形成の面でも有利です。
地震保険と構造の関係
火災保険とセットで加入することが多い地震保険。こちらも構造によって保険料が変わります。
地震保険の構造区分は、火災保険とは少し違います。「イ構造(耐火建築物・準耐火建築物)」と「ロ構造(その他)」の2つです。
イ構造
RC造、SRC造、鉄骨造(準耐火建築物)、木造でも耐火建築物または準耐火建築物
ロ構造
上記以外の建物。一般的な木造住宅。
地震保険料は都道府県によって大きく異なります。地震のリスクが高い地域ほど保険料が高く設定されているためです。
例えば、建物の保険金額1000万円の場合(地震保険は火災保険の保険金額の30~50%が上限)、年間保険料は以下のようになります。
東京都の場合
- イ構造:年間約2.5万円
- ロ構造:年間約3.8万円
大阪府の場合
- イ構造:年間約1.5万円
- ロ構造:年間約2.5万円
福岡県の場合
- イ構造:年間約0.7万円
- ロ構造:年間約1.2万円
地震リスクの高い関東や東海地方では、保険料がかなり高額になります。そして、構造による差も大きい。東京都でロ構造とイ構造を比較すると、年間で約1.3万円、30年で約39万円もの差が生まれます。
地震保険は任意加入ですが、日本は地震大国。特に木造住宅は地震による倒壊リスクが相対的に高いため、加入を検討する人が多いでしょう。その際、構造によって保険料が大きく変わることは知っておいて損はありません。
地震への強さは保険料だけでなく、家族の安全に直結します。構造別の耐震性能比較を確認し、保険料とのバランスを検討してみてください。
実際の保険料シミュレーション
ここで、具体的な数字を使って、構造別の保険料を比較してみましょう。
【前提条件】
- 所在地:東京都
- 建物の保険金額:木造2000万円、鉄骨造2500万円、RC造3000万円
- 火災保険:一般的な補償内容(火災、風災、水災など)
- 地震保険:建物の50%を補償(木造1000万円、鉄骨造1250万円、RC造1500万円)
- 保険期間:1年(長期契約による割引は考慮しない)
木造住宅(H構造)の場合
- 火災保険料:年間約4万円
- 地震保険料(ロ構造):年間約3.8万円
- 合計:年間約7.8万円
- 30年間:約234万円
鉄骨造住宅(T構造)の場合
- 火災保険料:年間約2.5万円
- 地震保険料(イ構造):年間約3.1万円
- 合計:年間約5.6万円
- 30年間:約168万円
RC造住宅(T構造)の場合
- 火災保険料:年間約3万円
- 地震保険料(イ構造):年間約3.8万円
- 合計:年間約6.8万円
- 30年間:約204万円
このシミュレーションからわかるのは、年間で約2万円、30年間で約66万円もの差が生まれるということ。木造(H構造)と鉄骨造を比較すると、鉄骨造の方が大幅に保険料が安くなります。
ただし、RC造は保険金額が高いため、T構造であっても総額では鉄骨造より高くなることがあります。
火災保険料を安くする方法
構造は変えられないとしても、火災保険料を抑える工夫はいくつかあります。
長期契約を活用する
火災保険は最長10年まで一括契約ができます。長期契約にすると、保険料が割引されるため、年間契約を繰り返すより総額が安くなります。
例えば、年間保険料4万円の場合、10年分を一括で支払うと、約36万円程度(10%割引)になることがあります。4万円×10年=40万円のところが36万円になれば、4万円の節約です。
ただし、一括払いなので初期の負担は大きくなります。資金に余裕がある場合に検討しましょう。
補償内容を見直す
火災保険には、火災、風災、水災、盗難、破損など、さまざまな補償がパッケージされています。でも、すべてが必要とは限りません。
例えば、高台に住んでいて水害のリスクがほとんどない場合、水災補償を外すことで保険料を下げられます。マンションの高層階なら、床上浸水のリスクはゼロに近いでしょう。
ただし、補償を外すと、万が一の時に保険金が出ません。ハザードマップなどで自宅周辺のリスクをしっかり確認してから判断しましょう。
免責金額を設定する
免責金額とは、損害が発生した際に自己負担する金額のこと。例えば、免責金額5万円に設定すると、損害額が10万円の場合、保険金は5万円しか出ません。
免責金額を高く設定すると、保険料は安くなります。小さな損害は自己負担でいい、大きな損害だけカバーできればいいという考え方なら、この方法は有効です。
複数の保険会社を比較する
火災保険は保険会社によって保険料が大きく異なります。同じ補償内容でも、A社では年間4万円、B社では3万円ということもあります。
インターネットの一括見積もりサービスを使えば、複数社の保険料を簡単に比較できます。少し手間はかかりますが、年間1万円、30年で30万円の差が生まれることもあるので、比較検討する価値はあります。
割引制度を活用する
保険会社によっては、さまざまな割引制度があります。
- オール電化割引:オール電化住宅は火災リスクが低いとされ、割引が適用されることがあります。
- ホームセキュリティ割引:セキュリティシステムを導入している住宅は、割引されることがあります。
- 耐震等級割引:耐震等級が高い住宅は、地震保険料が割引されます。
こうした割引を活用することで、保険料を数パーセント下げられます。
省令準耐火構造で保険料を半分に
木造住宅を検討している方にとって、最も効果的な保険料削減策が「省令準耐火構造」の採用です。
省令準耐火構造とは、住宅金融支援機構が定める基準を満たした構造のこと。火災に強く、延焼を防ぐ性能があるため、H構造からT構造に格上げされ、保険料が約半分になります。
省令準耐火構造の主な基準
- 外壁・軒裏が防火構造
- 各室が石膏ボードなどで区画されている
- 天井・壁に一定の防火性能を持つ材料を使用
大手ハウスメーカーでは、標準仕様または選択可能な仕様として提供していることが多いので、契約前に確認してみましょう。
追加費用は30万円~50万円程度かかりますが、火災保険料の節約分を考えると、10年程度で回収できます。しかも、実際の火災安全性も向上するので、安心感も得られます。
フラット35(住宅金融支援機構の住宅ローン)を利用する場合、省令準耐火構造なら金利が優遇されることもあります。保険料だけでなく、ローン金利でもメリットがあるわけです。
木造を選ぶなら、省令準耐火構造は真剣に検討する価値があります。
耐震等級と地震保険割引
地震保険には、建物の耐震性能に応じた割引制度があります。耐震等級が高いほど、割引率も大きくなります。
耐震等級による割引率
- 耐震等級3:50%割引
- 耐震等級2:30%割引
- 耐震等級1:10%割引
例えば、年間の地震保険料が4万円の場合、耐震等級3なら2万円に、耐震等級2なら2.8万円になります。
30年間で計算すると、耐震等級3なら60万円の節約です。
耐震等級3を取得するには、設計段階から対応する必要があり、追加費用は50万円~100万円程度かかることもあります。でも、地震保険料の割引だけでなく、実際の地震への安全性が高まるので、検討する価値は十分あります。
特に、地震リスクの高い地域に住む場合、耐震等級3の取得は家族の安全を守るためにも重要な選択です。
火災保険と住宅ローンの関係
住宅ローンを組む場合、ほとんどの金融機関は火災保険への加入を融資条件としています。なぜなら、万が一火災で建物が全焼しても、ローンだけが残ってしまうと、債務者が返済不能になるリスクがあるためです。
金融機関は、建物の再調達価格(同じ建物を建て直すのに必要な金額)を保険金額として設定することを求めます。つまり、勝手に保険金額を減らして保険料を安くする、ということはできません。
ただし、保険会社や補償内容の選択は自由です。金融機関が提携している保険会社を勧められることもありますが、必ずしもその保険に入る必要はありません。自分で比較検討して、条件の良い保険を選びましょう。
保険金額の設定と評価額
火災保険の保険金額は、建物の「再調達価格」を基準に設定します。これは、万が一全焼した場合に、同じ建物を建て直すのに必要な金額です。
建築費が3000万円だったから保険金額も3000万円、というわけではありません。建築後に建材や人件費が値上がりしていれば、再調達価格はもっと高くなります。
保険会社は、建物の構造、広さ、築年数、仕様などを考慮して、再調達価格を算定します。一般的に、RC造は木造より再調達価格が高く評価されるため、保険金額も高くなります。
保険金額を低く設定すれば保険料は安くなりますが、万が一の時に十分な補償が受けられません。「一部保険」という状態になり、損害額の全額が補償されないこともあります。
適切な保険金額を設定することが大切です。
構造を偽ると大変なことに
火災保険の契約時、建物の構造を正しく申告することは非常に重要です。「H構造だと保険料が高いから、T構造ということにしておこう」などと考えてはいけません。
構造を偽って契約すると、告知義務違反になります。万が一火災が発生して保険金を請求する際、保険会社が調査を行い、虚偽の申告が発覚すると、保険金が支払われない可能性があります。
それどころか、契約が解除され、それまでに支払った保険料も返ってこないこともあります。
保険は信頼関係で成り立っています。正直に申告しましょう。
まとめ:保険料も含めた総合的なコスト比較を
火災保険料は、建物の構造によって大きく変わります。
木造住宅は、一般的にH構造に分類され、保険料は高くなります。ただし、省令準耐火構造にすることでT構造になり、保険料を約半分に抑えられます。
鉄骨造住宅とRC造住宅は、T構造に分類され、保険料は木造(H構造)の半分程度。ただし、RC造は建物の評価額が高いため、保険金額が高く設定され、総額ではそれなりの負担になります。
地震保険も構造によって保険料が異なり、イ構造の方がロ構造より安くなります。
30年間で考えると、構造による保険料の差は数十万円から100万円近くになることもあります。これは決して無視できない金額です。
家を建てるとき、多くの人は建築費に注目しますが、保険料のような長期的なランニングコストも忘れずに考慮しましょう。
「木造は建築費が安いけど、保険料は高い」「RC造は建築費が高いけど、保険料は木造よりは安い」こうしたバランスを理解した上で、自分に合った構造を選ぶことが賢い家づくりにつながります。
また、省令準耐火構造や耐震等級の取得など、保険料を抑えるための工夫も検討する価値があります。初期費用は増えますが、長期的には十分に元が取れる投資です。
火災保険は、複数の保険会社を比較し、自分に合った補償内容を選ぶことで、保険料を抑えられます。少し手間はかかりますが、年間で数万円、長期では数十万円の節約になるかもしれません。
建築費、固定資産税、光熱費、メンテナンス費、そして保険料。すべてを総合的に考えて、後悔しない家づくりを目指しましょう。
特に、保険料と同じく構造によって数百万単位の差が出る構造別メンテナンス費用のシミュレーションも、予算計画には欠かせない視点です。