住宅タイプ別

賃貸併用住宅に最適な構造は?木造・鉄骨・RC造の収益性・遮音性・建築費を徹底比較

住宅ローンを家賃収入で返済する——そんな理想を実現できるのが賃貸併用住宅だ。自宅の一部を賃貸に出すことで、毎月の住居費負担を大幅に減らせる。うまくいけば、ローン返済後は安定した副収入源になる。

でも、賃貸併用住宅は普通の家とは違う。入居者に選ばれる物件にしないと、空室だらけで収支が破綻する。「隣の部屋の音がうるさい」と入居者が次々と退去していく——そんな失敗例も少なくない。

構造選びが、成否を分ける。木造は建築費が安いが、遮音性に不安がある。RC造は遮音性抜群だが、建築費が高くて利回りが悪化する。鉄骨造はその中間だが、本当にバランスが取れているのか。

※そもそも構造ごとの特徴がよく分からないという方は、木造・鉄骨造・RC造の坪単価やメリット・デメリットを比較したこちらの記事を先にお読みください。

さらに、住宅ローンの審査、固定資産税、長期的な修繕費——構造によって、こうしたコストも大きく変わってくる。

この記事では、賃貸併用住宅という特殊な用途に焦点を当てて、構造別の特徴を詳しく解説していく。単なる自宅ではなく、収益物件でもある賃貸併用住宅。構造選びを間違えると、経済的に大きな損失を被ることになる。

家賃収入で豊かな暮らしを実現するために、構造ごとのメリット・デメリットをしっかり理解しておこう。

賃貸併用住宅とは

賃貸併用住宅とは、一つの建物の中に自宅部分と賃貸部分を共存させた住宅のこと。1階に賃貸アパート、2階に自宅といった形が一般的だ。

最大のメリットは住宅ローンが使えること

自宅部分が建物全体の50%以上あれば、住宅ローンを利用できる。アパートローンに比べて金利が1%以上低いため、資金調達コストを大幅に抑えられる。

家賃収入でローン返済を賄えば、実質的な住居費負担はゼロに近づく。完済後は家賃収入がそのまま収入になるため、老後の生活資金としても期待できる。

デメリットは経営リスク

ただし、賃貸経営には空室リスク、家賃下落リスク、修繕費負担などがつきまとう。入居者トラブルもある。自宅の真下や隣に他人が住むため、プライバシーの問題も無視できない。

成功するかどうかは、立地と建物の質で決まる。そして建物の質を左上する最大の要素が、構造なのだ。

木造で賃貸併用住宅を建てる場合

木造は建築費を抑えられるため、利回りを重視する場合に選ばれやすい。ただし、賃貸物件としての競争力には課題がある。

建築費が安く、初期投資を抑えられる

木造の最大のメリットは、建築費の安さ。延床面積200㎡(自宅100㎡、賃貸2戸で100㎡)の賃貸併用住宅なら、3500万円~5000万円程度で建てられる。

自己資金が少なくても始められるため、若い世代でもチャレンジしやすい。利回り計算でも有利になる。

遮音性の低さが致命的

問題は、遮音性の低さ。賃貸物件を選ぶとき、多くの人が重視するのが「音」だ。「隣の生活音が聞こえる」「上の階の足音がうるさい」——こんな不満は、すぐに退去につながる。

木造アパートは、遮音性の低さから敬遠されることが多い。特に社会人や静かな環境を求める単身者には選ばれにくい。学生向けなら許容されることもあるが、家賃は安く抑えざるを得ない。

また、木造は湿気対策も入居者の満足度を左右します。空室リスクを抑えるためにも、構造別の湿気・結露特性とカビを防ぐ対策についても学んでおきましょう。

自宅部分にも音が響く

賃貸部分の音が自宅部分に響くのも問題だ。夜勤明けで昼間寝ている入居者、深夜まで友人を呼んで騒ぐ入居者——こうした人が住むと、自分の生活が脅かされる。

賃貸併用住宅は「大家が隣に住んでいる」ことで、入居者が比較的おとなしくなる傾向はある。でも、完全には防げない。

修繕費が定期的にかかる

木造は10~15年ごとに外壁塗装や屋根のメンテナンスが必要。賃貸併用住宅は建物が大きいため、1回の修繕で150万円~250万円程度かかる。

家賃収入から修繕費を積み立てておかないと、突然の出費で困ることになる。

空室リスクが高め

遮音性の低さ、築年数の経過による劣化——こうした要因で、木造賃貸は空室リスクが高い。築15年を過ぎると、入居者確保に苦労することが多い。

家賃を下げざるを得なくなり、収支計画が狂う。最悪の場合、ローン返済ができなくなるリスクもある。

鉄骨造で賃貸併用住宅を建てる場合

鉄骨造は、木造とRC造の中間的な性能。賃貸併用住宅では、現実的な選択肢の一つといえる。

大手メーカーの安心感

鉄骨造は、大手ハウスメーカーが得意とする構造。積水ハウス、ダイワハウス、へーベルハウスなど、賃貸併用住宅の実績が豊富なメーカーが多い。

建物の品質が安定しており、入居者にも「大手メーカー施工」という安心感を与えられる。これは入居率に影響する。

遮音性は木造より上

軽量鉄骨造でも、大手メーカーの住宅は独自の遮音技術を採用している。木造よりは明らかに遮音性が高く、賃貸物件としての競争力がある。

重量鉄骨造なら、床にコンクリートを打つため、さらに遮音性は向上する。「音が静か」という口コミが広がれば、入居者確保もしやすい。

3階建て以上にも対応

狭小地に賃貸併用住宅を建てる場合、3階建てにして賃貸戸数を増やしたいこともある。鉄骨造なら、3階建て、4階建ても構造的に問題ない。

賃貸戸数が増えれば、空室リスクも分散できる。1戸空いても他の部屋の家賃でカバーできる。

建築費は木造の1.3~1.5倍

延床面積200㎡の賃貸併用住宅で、軽量鉄骨造なら4500万円~6500万円程度、重量鉄骨造なら5500万円~7500万円程度。

木造より1000万円~2500万円高くなる。この初期投資の差を、家賃収入で回収できるかがポイントだ。

家賃を高めに設定できる

鉄骨造は、木造より耐久性や遮音性が高いため、家賃を高めに設定できる。同じ立地・広さなら、木造より5~10%高い家賃でも入居者がつくことが多い。

長期的に見れば、建築費の差を回収できる可能性は十分ある。

住宅ローンの審査が通りやすい

大手ハウスメーカーの鉄骨造は、銀行からの評価が高い。住宅ローンの審査も通りやすく、融資額も大きく出やすい傾向がある。

RC造で賃貸併用住宅を建てる場合

RC造は、賃貸物件として最高の品質を実現できる。ただし、建築費の高さがネックだ。

遮音性は最高レベル

RC造の最大の強みは、圧倒的な遮音性。隣の部屋の音はほとんど聞こえないし、上下階の音も大幅に軽減される。

賃貸物件を探す人にとって、「音が静か」は最重要ポイントの一つ。RC造というだけで、内見に来る人が増える。

家賃を大幅に高く設定できる

RC造の賃貸物件は、木造や軽量鉄骨造より2~3割高い家賃でも入居者がつく。同じ立地で、木造なら家賃7万円のところ、RC造なら8.5万円~9万円で貸せることも珍しくない。

この家賃差が、長期的には大きな収入差になる。30年間で計算すると、数百万円から1000万円以上の差が生まれる。

空室リスクが低い

RC造の賃貸物件は、築年数が経過しても資産価値が下がりにくい。築20年のRC造マンションでも、きちんとメンテナンスされていれば、安定した入居率を保てる。

木造が築15年で苦戦し始めるのと対照的だ。長期的な経営という点では、RC造が圧倒的に有利。

建築費が非常に高い

問題は、建築費の高さ。延床面積200㎡の賃貸併用住宅で、7000万円~1億円程度かかる。

自己資金が相当必要だし、住宅ローンの借入額も大きくなる。返済期間を長く取っても、毎月の返済額は重い負担になる。

利回りが低くなる

建築費が高いため、表面利回りは低くなる。木造なら利回り8~10%を狙えるところ、RC造では5~7%程度になることが多い。

ただし、空室リスクが低く、家賃下落も緩やかなため、実質的な収益性は悪くない。長期保有を前提にするなら、十分に採算が取れる。

固定資産税が高い

RC造は評価額が高いため、固定資産税も高くなる。これは経費として計上できるが、キャッシュフローには影響する。

年間で木造の1.5~2倍程度の固定資産税がかかることを、収支計画に織り込んでおく必要がある。

RC造は評価額が下がりにくいため、税負担も重くなります。構造によって固定資産税がいくら変わるのか、具体的なシミュレーションで確認することをおすすめします。

融資条件が厳しめ

RC造の賃貸併用住宅は、建築費が高額なため、融資審査も厳しくなる。年収、自己資金、属性(勤務先、勤続年数など)が重視される。

住宅ローンとして借りる場合でも、自宅部分が50%以上という条件を満たす必要がある。これを満たさないと、アパートローン扱いになり、金利が跳ね上がる。

収益シミュレーション比較

延床面積200㎡(自宅100㎡、賃貸2戸×50㎡)の賃貸併用住宅を建てた場合の収益を比較してみよう。

【前提条件】

  • 立地:東京近郊の駅徒歩10分
  • 賃貸部分:1LDK×2戸
  • 自己資金:1000万円
  • ローン:30年返済、金利1.5%(住宅ローン)

木造の場合

  • 建築費:4500万円
  • ローン借入:3500万円
  • 月々の返済額:約12万円
  • 想定家賃:7万円×2戸=14万円/月
  • 実質収入(空室率10%考慮):12.6万円/月
  • 差引:+0.6万円/月(黒字)
  • 表面利回り:3.7%

軽量鉄骨造の場合

  • 建築費:5500万円
  • ローン借入:4500万円
  • 月々の返済額:約15.5万円
  • 想定家賃:7.5万円×2戸=15万円/月
  • 実質収入(空室率8%考慮):13.8万円/月
  • 差引:-1.7万円/月(赤字)
  • 表面利回り:3.3%

RC造の場合

  • 建築費:8500万円
  • ローン借入:7500万円
  • 月々の返済額:約26万円
  • 想定家賃:9万円×2戸=18万円/月
  • 実質収入(空室率5%考慮):17.1万円/月
  • 差引:-8.9万円/月(大赤字)
  • 表面利回り:2.5%

この試算を見ると、「賃貸併用住宅でローン返済を家賃収入で賄う」という理想は、かなり厳しいことがわかる。

ローン返済が終われば話は別だが、返済期間中は持ち出しが発生する可能性が高い。特にRC造は、初期の資金負担が重い。

表面上の収支だけでなく、数十年単位で発生する構造別メンテナンス費用の比較を含めた、トータルでの資金繰り計画を立てることが失敗を防ぐコツです。

賃貸部分の間取りと構造の関係

賃貸併用住宅では、間取りの工夫で収益性を高められる。構造によって、得意な間取りが異なる。

木造の場合

木造は柱の位置が制約になるため、大きな部屋を作りにくい。ワンルームや1K、1DKといった小さめの間取りに向いている。

学生や若い単身者向けの賃貸として、家賃を抑えて入居者を確保する戦略が現実的だ。

鉄骨造の場合

軽量鉄骨造でも、ある程度の広さは確保できる。1LDKや2LDKといった、ファミリーや社会人向けの間取りが可能だ。

重量鉄骨造なら、さらに大きな空間を作れる。広いリビングのある2LDKなど、高い家賃設定ができる間取りが実現できる。

RC造の場合

RC造は、柱の位置に制約が少ないため、自由な間取りが可能。広いリビング、大きな窓、バルコニー——高級感のある賃貸住宅を作れる。

デザイナーズ物件として差別化すれば、周辺相場より高い家賃でも入居者がつく。

立地による構造の選び方

賃貸併用住宅は、立地によって最適な構造が変わってくる。

都心部・駅近の場合

都心部や駅近の好立地なら、RC造が有利。高い家賃でも入居者が集まるため、建築費の高さを家賃収入でカバーできる。

競合物件も多いため、RC造の遮音性や高級感が差別化要素になる。

郊外・駅から離れた場所の場合

郊外や駅から離れた立地では、高い家賃設定が難しい。RC造で建てても、建築費を回収できない可能性が高い。

木造か軽量鉄骨造で建築費を抑え、手頃な家賃で幅広い層を狙う方が現実的だ。

学生街の場合

大学が近い学生街なら、木造でも十分勝負できる。学生は家賃の安さを重視するため、遮音性の低さは許容されやすい。

ただし、春の引っ越しシーズンに空室が集中するリスクはある。

住宅ローンと賃貸併用住宅

賃貸併用住宅で住宅ローンを利用するには、条件がある。

自宅部分が50%以上必要

建物全体の床面積のうち、自宅部分が50%以上でないと住宅ローンは使えない。これを下回ると、アパートローン扱いになり、金利が2~4%程度に跳ね上がる。

賃貸戸数を増やして収益性を高めたい気持ちはわかるが、50%ラインは守る必要がある。

銀行によって評価が異なる

賃貸併用住宅への融資姿勢は、銀行によって大きく異なる。積極的な銀行もあれば、消極的な銀行もある。

複数の銀行に相談して、条件を比較することが大切だ。RC造の場合、建築費が高額なため、融資額の上限に引っかかることもある。

家賃収入を返済能力に算入できる場合も

一部の銀行では、賃貸部分の家賃収入を返済能力として考慮してくれる。これにより、借入可能額が増える。

ただし、空室リスクを考慮して、想定家賃の7~8割程度しか算入されないことが多い。

失敗しない賃貸併用住宅のポイント

賃貸併用住宅で失敗しないためには、いくつかのポイントがある。

立地が最重要

どんな構造を選んでも、立地が悪ければ入居者は集まらない。駅からの距離、周辺環境、競合物件の状況——これらを冷静に分析する必要がある。

「自分が住みたい場所」と「入居者が住みたい場所」は違うこともある。感情ではなく、データで判断しよう。

遮音性は絶対に妥協しない

賃貸物件の不満で最も多いのが「音」。遮音性が低いと、入居者がすぐに退去する。

木造を選ぶ場合でも、遮音対策には十分な予算を割くべきだ。できれば、重量鉄骨造以上を選びたい。

空室を織り込んだ収支計画

「満室なら家賃収入でローンを完済できる」という甘い計算は危険だ。空室率10~20%を織り込んだ収支計画を立てる必要がある。

自己資金での持ち出しを覚悟した上で、それでも実行する価値があるか判断しよう。

修繕費の積立

木造なら10~15年ごと、RC造でも15~20年ごとに大規模修繕が必要。家賃収入の10~15%を修繕費として積み立てておく必要がある。

これを怠ると、突然の出費で資金繰りが破綻する。

管理の手間を考える

賃貸経営には、入居者募集、契約手続き、家賃回収、クレーム対応など、様々な業務が発生する。

自主管理するか、管理会社に委託するか。委託すると家賃の5~10%程度の手数料がかかるが、手間とリスクを減らせる。

まとめ:収益性と快適性のバランスで選ぼう

賃貸併用住宅の構造選びは、単なる自宅以上に慎重な判断が必要だ。

木造は建築費が安く、表面利回りは高い。でも、遮音性の低さから入居者確保に苦労する可能性がある。郊外の学生向けなど、限定的な用途には向いている。

鉄骨造は、建築費と性能のバランスが取れている。大手メーカーの安心感もあり、入居者にも選ばれやすい。現実的な選択肢として、最も無難だろう。

RC造は、賃貸物件として最高品質を提供できる。長期的な経営を考えるなら理想的だが、建築費の高さがネック。都心部の好立地で、高い家賃設定が可能な場合に限られる。

賃貸併用住宅は、うまくいけば住居費をゼロにできる夢のような選択。でも、甘く見ると失敗する。

立地、構造、資金計画——すべてをシビアに検討した上で、実行する価値があるか判断しよう。構造選びは、その成否を大きく左右する重要な決断なのだから。

なお、賃貸経営のランニングコストを抑えるためには保険料の見直しも有効です。構造で火災保険料が100万円以上変わる理由についても併せて確認しておきましょう。

関連記事

TOP