建築

「木造・鉄骨造・RC造」どれがいい?後悔しない家づくりのための建物の構造 基礎知識

「そろそろマイホームを建てたい!」そう思ったとき、あなたはどこから考え始めますか?

おしゃれな間取り、最新の設備、広々としたキッチン…もちろん大事ですが、最も重要なのは、住む人の命と財産を守るための「建物の構造」です。地震大国・日本において、家が安全であることは、何よりも優先されるべきことですよね。

「木造、鉄骨造、RC造ってよく聞くけど、結局どれがいいの?」「耐震等級って何?」家づくりを始めたばかりの方にとって、構造の話は専門的で分かりづらく、ついつい後回しにしてしまいがちです。

この記事では、建物の安全を支える「構造」について、専門的な知識がない方にもわかりやすく、そして「後悔しない家づくり」のために役立つ基礎知識を徹底的に解説します。

これから家を建てる方も、リフォーム・リノベーションを考えている方も、ぜひ最後まで読んで、安心できる住まい選びの第一歩を踏み出してください。

そもそも「建物の構造」って何?なぜ重要?

「構造」とは、簡単に言えば建物を支える骨格のことです。この骨格が、地震や風、積雪、そして建物自体の重さ(自重)といった、あらゆる力に耐え、家全体が壊れないように支える役割を担っています。

構造設計と構造計算の役割

この骨格をどのようにするかを決めるのが「構造設計」です。そして、その設計が本当に安全かを数学的に証明するのが「構造計算」です。

私たちが普段目にすることはほとんどない、壁の裏や床下に隠された部分ですが、この見えない部分こそが、建物の「安全性」「耐久性」「住み心地」の全てを決定づけていると言っても過言ではありません。

日本の建築物はすべて「建築基準法」という法律に則って建てなければなりません。この法律は、建物の構造に関して最低限守るべきルールを定めています。しかし、「最低限」の基準だけでは、大きな地震後に住み続けられる保証はありません。

家を建てるということは、数千万円の大きな資産形成です。その資産と家族の命を守るため、構造を理解し、「基準以上の安全」を目指した設計を選ぶことが、後悔しない家づくりの絶対条件となるのです。

家づくりの構造は大きく3種類!メリット・デメリットを徹底比較

日本で一般的に採用される住宅の構造は、大きく分けて「木造」「鉄骨造」「鉄筋コンクリート造(RC造)」の3種類です。それぞれ特徴が全く異なるため、家づくりで重視したいポイント(費用、耐震性、デザインなど)に合わせて選ぶことが重要です。まずは、それぞれの構造の特徴を比較してみましょう。

構造の種類 主な骨組み コスト(目安) 工期(目安) 設計自由度 耐久性・耐火性
木造(W造) 木材 最も安価 最も短い 大空間は要工夫 要適切な防腐・防蟻処理
鉄骨造(S造) 鋼材(鉄骨) 中間~高め 中間的 大空間向き 火災時の変形に注意
鉄筋コンクリート造(RC造) 鉄筋とコンクリート 最も高価 最も長い 間取り変更が難しい 耐久性・耐火性に優れる

※上記は一般的な目安であり、工法や仕様によって大きく変動します。

① 木造(W造):日本の住宅の主流

柱や梁に木材を使った構造で、日本の戸建住宅の約9割が木造です。在来工法(木造軸組工法)や、面で支える2×4(ツーバイフォー)工法などが主流です。木材は軽量でありながら、適切に設計すれば高い耐震性を発揮します。

木造のメリットと適性

  • コストパフォーマンス:材料費、工費ともに抑えやすく、初期投資の負担を減らせます。
  • 調湿性・断熱性:木材自体が湿気を吸放出する能力があり、日本の気候に適しています。また熱伝導率が低く、断熱性も高いです。
  • リフォームの柔軟性:特に在来工法は柱と梁で支えるため、将来的な増改築や間取り変更が比較的容易です(ただし構造上重要な壁や柱は変更できません)。

木造のデメリットと対策

  • 耐久性の維持:木材は、水濡れやシロアリによる腐食・劣化のリスクがあります。そのため、長期優良住宅などの基準を満たすには、防腐・防蟻処理や、壁内結露を防ぐための適切な通気層の確保が必須となります。
  • 大空間の制約:大スパン(柱と柱の間隔が広い)や大開口(大きな窓)を実現するには、木造以外の構造に比べて、高強度な集成材や特殊な金物、SE構法などの高度な工法が必要となり、コストが上がります。

② 鉄骨造(S造):強度と自由度を両立

主要な骨組みに鋼材(鉄骨)を使う構造です。工場で生産されるため品質が安定しており、少ない柱で建物を支えられることから、デザインの自由度が高いことが特徴です。鋼材の厚さによって軽量鉄骨造と重量鉄骨造に分かれます。

鉄骨造のメリットと適性

  • 設計の自由度:鉄骨は木材よりも強度があるため、柱のない大空間や、ビルトインガレージ、オーバーハング(跳ね出し)といったデザインを実現しやすいです。
  • 耐震性(粘り):鉄骨は、地震の揺れを受けてもすぐに破断せず、粘り強く変形することでエネルギーを吸収します。これが高い耐震性能に繋がります。
  • 品質安定:部材が工場生産のため、現場での品質のばらつきが少ないです。

鉄骨造のデメリットと対策

  • コスト高:木造に比べると、材料費や加工費が高くなる傾向があります。
  • 断熱対策の徹底:鉄は熱を伝えやすいため、柱や梁が外気と接する部分で熱が伝わり、室内に結露をもたらすヒートブリッジ現象が発生しやすいです。高性能な断熱材や、熱を遮断する構造上の工夫が不可欠です。
  • 火災時の弱さ:鉄骨は火災の熱に晒されると強度が急激に低下し、建物を支えられなくなるリスクがあります。そのため、石膏ボードや耐火被覆材などによる適切な耐火対策が必須となります。

③ 鉄筋コンクリート造(RC造):最高の耐久性と安心感

鉄筋とコンクリートを組み合わせた構造です。高い圧縮強度(コンクリート)と引っ張り強度(鉄筋)を兼ね備えた、非常に強固な構造体です。主にマンションや公共施設に用いられますが、デザイン性や性能を追求する戸建てにも採用されます。

RC造のメリットと適性

  • 耐久性・耐火性:コンクリートが鉄筋を覆うことで、火災や錆から鉄筋を保護し、建物の寿命を極めて長くします。法定耐用年数は他の構造よりも長いです。
  • 遮音性:壁や床が重く密実なため、外部の騒音を大幅にカットし、また室内の生活音も外に漏れにくい、優れた遮音性能を持ちます。
  • 耐震性:強固な壁や柱、床が一体となった強靭な箱型の構造で地震の力に対抗するため、極めて高い耐震性を誇ります。

RC造のデメリットと対策

  • コスト高と工期:最も材料費が高く、型枠工事やコンクリートの打設・養生期間が必要なため、他の構造よりも工期が数ヶ月単位で長くなります。
  • 間取り変更の制限:壁や柱、床が一体で構造体の役割を担っているため、完成後に「壁を抜く」といった大規模な間取り変更は非常に難しく、原則としてできません。
  • 断熱対策:コンクリートも熱を伝えやすいため、壁の内側や外側に高性能な断熱材を施す断熱・防露対策が必須です。

安全性のレベルを示す!耐震等級と長期優良住宅の基準

どの構造を選ぶにせよ、その建物の「耐震性」を具体的に示す指標、「耐震等級」を理解することは、後悔しない家づくりの鍵です。

耐震等級1・2・3の違い

耐震等級は、住宅性能表示制度で定められた、建物の耐震性能を客観的に評価する基準です。数字が大きいほど、耐震性が高くなります。

耐震等級1(最低限の安全)

建築基準法で定められた最低限の耐震性能です。数百年に一度発生する大地震(震度6強~7程度)に対して、倒壊・崩壊はしない強度を意味します。しかし、あくまで倒壊を免れるレベルであり、構造体に大きな損傷が生じ、地震後の住み替えや大規模な補修が必要になる可能性が高いです。

耐震等級2(長期優良住宅の必須条件)

等級1の1.25倍の耐震性を持ちます。避難所に指定される学校や病院などの公共施設と同等レベルです。この等級は、「長期優良住宅」の認定基準の一つであり、地震後の復旧がしやすく、地震保険料の割引が受けられるメリットもあります。

耐震等級3(最高等級・復旧可能な安全)

等級1の1.5倍の耐震性を持ちます。現行の法律で定められた最も高い等級です。目標は、大地震後も構造体に軽微な損傷しか生じず、補修をすれば住み続けられること。地震大国に住むなら、初期コストが上がったとしても、等級3を目指すことは、家族の安全と資産を守る上で最も合理的な選択と言えます。

長期優良住宅の構造基準とは?

長期優良住宅とは、国が定める基準(劣化対策、耐震性、維持管理・更新の容易性など)を満たし、長期にわたり良好な状態で使用できると認定された住宅です。

認定を受けるメリットは、税制優遇や住宅ローンの金利優遇、そして何よりも「構造的・耐久的に非常に安心できる住宅」であることの証明です。

構造に関する主な必須基準は以下の通りです。

  • 耐震性:耐震等級2以上であること。
  • 劣化対策:構造躯体(骨組み)について、数世代にわたり使用できる措置を講じていること。例えば、木造であれば床下や小屋裏の点検口の設置、防腐・防蟻措置の徹底、RC造であればコンクリートの厚さ(かぶり厚さ)の確保などが求められます。
  • 維持管理・更新の容易性:給排水管などの設備配管を、将来的な点検や交換が容易な構造としていること。これにより、構造体を傷つけずにメンテナンスが可能となります。

家の寿命は何年?と疑問に思う方もいるかもしれませんが、長期優良住宅の基準を満たした家は、適切にメンテナンスを行えば、数十年以上にわたり資産価値を維持しやすい構造となります。

見えないからこそ重要!構造計算と地盤の真実

安全な家づくりは、構造材を選ぶだけでは終わりません。その家が建つ「地盤」と、その家一つ一つに対して行われる「計算」こそが、本当の安全性を左右します。

すべての家が「構造計算」をしているわけではない?

ここでいう「構造計算」とは、建物のすべての部材(柱、梁、壁、基礎など)にかかる力や変形を、建築基準法に基づき綿密にシミュレーションし、安全性を数値で証明する「許容応力度計算(ルート2)」や、さらに高度な「限界耐力計算(ルート3)」を指します。

しかし、実は木造の2階建て以下(いわゆる四号建築物)の建物の場合、建築基準法上は、この正式な構造計算ではなく、より簡略化された「壁量計算」や「四分割法」などのチェックで済ませることが認められています。

この簡略化された計算方法では、大地震時の建物のねじれや、柱や梁の強度が詳細に検討されません。そのため、「基準法は満たしているが、耐震等級1レベルでしかない」というケースが多発します。

高い安全性を求めるなら、規模にかかわらず、設計者に対して「許容応力度計算(ルート2以上)を実施してください」と依頼すべきです。耐震等級2以上を取得するためには、この詳細な構造計算が必須となります。

家の寿命を決める「地盤」の話

どんなに強固な構造の家を建てても、足元となる「地盤」が弱ければ、地震時に地盤沈下や液状化を起こし、建物が傾いてしまうリスクがあります。地震の揺れは、まず地盤から建物に伝わるからです。

  • 地盤調査の必須性:家を建てる前には、地盤調査(スウェーデン式サウンディング試験など)が必ず行われます。地盤の強さを測り、その土地に適した基礎の形状や、地盤改良(補強)の必要性を判断します。
  • 地盤改良の費用:調査の結果、地盤が弱いと判断された場合、杭打ちや表層改良といった地盤改良が必要になります。この費用は数十万〜数百万円と幅広く、予算に大きな影響を与えます。
  • 液状化リスク:特に埋立地や古い川の近くなど、地下水位が高い砂質の地盤では、地震時に地盤が液体のようになる液状化のリスクがあります。地盤調査報告書やハザードマップで、その土地の特性をしっかり確認することが重要です。

地盤調査の結果は、建物を建てる際の基礎構造(ベタ基礎、布基礎、杭基礎など)の設計にも直結します。地盤に関する費用は、家の価格とは別でかかることが多いため、設計の初期段階で必ず確認しましょう。

デザインと構造を両立する設計のポイント

「開放的な大空間リビングが欲しい」「大きな窓で明るい家にしたい」といったデザインの要望は、構造設計に大きく影響します。デザインの夢を叶えつつ、安全性を確保するためのポイントを知っておきましょう。

大空間・柱なし空間の作り方

広々としたLDKや、ガレージハウス(ビルトインガレージ)のように柱のない大空間を実現したい場合、構造の選択肢が絞られます。

  • 鉄骨造(S造):鉄骨の強度を活かし、少ない柱で広いスパンを飛ばすことが最も容易です。
  • 木造:梁を太くする(集成材の使用)、または高い剛性を持つ構造用合板で壁面や床面を補強する必要があります。特に、SE構法などのラーメン構造(柱と梁を強固に接合する)を採用すれば、木造でも柱のない大空間を実現可能です。

ただし、構造が複雑になるほど、構造計算は必須となり、コストも高くなることを理解しておく必要があります。また、ビルトインガレージなど、1階に大きな開口部がある建物は、地震力がかかった際に「1階が潰れやすい」という構造的な弱点が発生しやすいため、詳細な構造設計と綿密な計算が求められます。

吹き抜けのある家と耐震性

吹き抜けは、開放感と明るさをもたらす人気の間取りですが、「地震に弱いのではないか?」と心配される方も少なくありません。これは、吹き抜けによって床の連続性が途切れるため、水平方向の剛性が低下することが原因です。

構造設計では、この弱点を補うために、吹き抜けの周りの床や壁に通常の家よりも多くの耐力壁を配置したり、床の梁を補強したりといった対策を講じます。吹き抜けを作る場合は、建築士に「この吹き抜けの剛性低下をどのように補っていますか?」と質問し、構造計算書でその安全性を確認することが重要です。

リフォーム・リノベーションで壁を抜く際の注意点

既存の住宅をリフォームする際、「壁を抜いて部屋を広げたい」という要望は多いです。しかし、その壁が耐力壁(構造上、地震や風の力に対抗する壁)である場合、安易に撤去することはできません。

壁を抜く際は、構造専門家による調査を行い、耐力壁であるかどうかを特定する必要があります。耐力壁だった場合は、抜いた壁の代わりに、梁の補強や別の場所に耐力壁を新設するなどの代替補強工事が必須となります。特に木造の在来工法では、構造図がない場合も多いため、必ず専門家に依頼し、必要な手続き(確認申請など)を踏むようにしてください。

後悔しない家づくりのための“見えない部分”チェックリスト

契約前に、依頼するハウスメーカーや工務店に対して、家の安全性に関する以下の項目を必ず確認しましょう。これが、あなたの家が「安心できる家」であるかの試金石となります。

構造・計算に関するチェックリスト

構造計算の実施有無

  • 木造2階建て以下の場合でも、許容応力度計算(ルート2)を実施するか?
  • 耐震等級3を取得するための計算書を提出できるか?

耐震等級

  • 最低でも耐震等級2以上を標準としているか?
  • 耐震等級3を取得する場合の追加費用はいくらか?

構造設計士の関与

  • 構造設計は、構造一級建築士などの専門家が行っているか?
  • デザイン設計者とは別に、構造の専門家がチェックする体制があるか?

耐久性・劣化対策に関するチェックリスト

劣化対策

  • 長期優良住宅の基準に準じた劣化対策(防腐・防蟻、点検口設置など)を行っているか?
  • 特に木造の場合、木材の含水率(乾燥度)を管理しているか?

地盤保証

  • 地盤調査の結果に基づき、適切な基礎工法を採用しているか?
  • 地盤改良後の不同沈下(家が不均等に沈むこと)に対する保証(10年保証など)があるか?

家の価格が安いからといって、構造や地盤改良で妥協することは、将来的に地震による被害や、数年後のメンテナンス費用として跳ね返ってきます。特に構造計算の省略と地盤改良のコストダウンは、安全性を損なう最も危険な妥協点です。

構造の違いから見る家の価格差と選び方

「家の価格、なぜこんなに違う?」と感じる大きな要因の一つが、構造と仕様の違いです。賢く家を建てるためには、構造の違いが価格にどう反映されるのかを理解することが大切です。

価格に影響する構造以外の要因

構造の種類以外にも、価格を大きく左右する要因があります。

  • 工法の複雑さ:シンプルな総2階建てよりも、複雑な凹凸のある形状や、特殊な工法(大空間、ビルトインガレージなど)を採用すると、構造材の加工費や手間が増し、価格が上昇します。
  • 建物の大きさ(延床面積):当然ながら、床面積が広くなれば構造材も多く必要となり、価格は上がります。
  • 住宅性能:耐震等級3、高気密・高断熱(ZEH水準など)といった高性能を目指す場合、構造計算の費用や、高性能な構造材、断熱材の採用により、建築費用は高くなります。
  • 資材の仕入れ:ハウスメーカーは大量仕入れでコストを抑えやすい一方、工務店や設計事務所は個別に資材を選ぶため、価格が高くなる傾向がありますが、こだわりを実現しやすいというメリットがあります。

建売と注文住宅、構造面での安心感

建売住宅と注文住宅では、構造面での安心感の得方が異なります。

  • 建売住宅:コストを抑えるため、構造計算が簡略化されている(壁量計算のみ)ケースも少なくありません。構造の仕様は標準化されていますが、耐震等級がどれくらいかを必ず確認し、可能であれば構造計算書の写しを請求しましょう。
  • 注文住宅:施主の要望に合わせて設計されるため、最初から耐震等級3や長期優良住宅を目標に、詳細な構造計算を行うことができます。建物の安全性を自分でコントロールできるのが最大のメリットです。

安心感を得るためには、建売・注文に関わらず、「構造計算(許容応力度計算)に基づいた設計か」という一点を妥協してはいけません。

まとめ:構造の知識は「安心」を買うための必須スキル

建物の構造は、家の「見えない土台」であり、家族の安全と快適な暮らしを支える最も重要な要素です。目に見えるデザインや設備に目が行きがちですが、ぜひ構造の知識を身につけ、「安心」という価値をしっかりと予算に組み込んでください。

この記事でご紹介した構造の種類、耐震等級、そして構造設計のチェックポイントを参考に、あなたが心から安心して住める、理想のマイホームを実現されることを願っています。

「この間取りは構造的に大丈夫?」「うちの土地にはどんな構造が最適?」もし疑問や不安があれば、遠慮せずに構造のプロである設計士や建築士に相談してください。それが、後悔のない家づくりの一番の近道です。

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