建築

耐震等級とは?等級1・2・3の違いと取得メリットを徹底解説

家を建てるとき、「耐震等級3にしますか?」と聞かれたことはありませんか? 耐震等級は、建物がどれくらい地震に強いかを示す指標です。等級が高いほど地震に強く、安全性が高くなります。 でも、等級を上げるとコストもかかります。「本当に等級3は必要なの?」「等級2じゃダメなの?」と迷う人も多いでしょう。

今回は、耐震等級1・2・3の違いから、取得のメリット・デメリット、費用、実際の地震での被害状況まで、徹底的に解説していきます。

耐震等級とは?

耐震等級は、住宅性能表示制度で定められた、建物の地震に対する強さを示す指標です。

住宅性能表示制度

2000年に始まった制度で、住宅の性能を客観的に評価・表示するものです。
耐震性だけでなく、断熱性、遮音性、バリアフリー性など、さまざまな性能項目があります。その中の一つが「耐震等級」です。

耐震等級の3段階

耐震等級は、等級1・2・3の3段階があります。

  • 耐震等級1: 建築基準法レベル(最低基準)
  • 耐震等級2: 等級1の1.25倍の強さ
  • 耐震等級3: 等級1の1.5倍の強さ

数字が大きいほど、地震に強い建物です。

なぜ耐震等級が重要なのか

日本は世界有数の地震大国です。
いつ大地震が来るかわかりません。

耐震等級を取得することで、以下のメリットがあります。

  • 地震による倒壊・損傷のリスクを減らせる
  • 地震保険の割引が受けられる
  • 住宅ローンの優遇がある(フラット35Sなど)
  • 資産価値の維持につながる
  • 家族の安全を守れる

耐震等級1とは

まずは、最低基準である耐震等級1について解説します。

耐震等級1の定義

「数百年に一度発生する地震(震度6強〜7程度)に対して、倒壊・崩壊しない」
これが耐震等級1の基準です。建築基準法の最低基準と同じレベルです。

具体的な性能

  • 震度5程度の地震: 住宅が損傷しない
  • 震度6強〜7の地震: 倒壊しないが、損傷は許容される

つまり、大地震で建物が大きく損傷しても、倒壊して人が下敷きにならなければOK、という基準です。

耐震等級1で建てられる建物

新築住宅は、基本的にすべて耐震等級1以上です。
建築基準法を守っていれば、自動的に等級1はクリアしています。

ただし、等級1では地震保険の割引がありません。

耐震等級1のメリット・デメリット

メリット
  • 追加コストがかからない
  • 建築基準法を満たしていれば取得できる
  • 間取りの自由度が高い
デメリット
  • 地震保険の割引なし
  • 大地震で損傷する可能性が高い
  • 資産価値の面で不利

耐震等級2とは

次に、中間レベルの耐震等級2を見ていきましょう。

耐震等級2の定義

「等級1の1.25倍の地震力に耐えられる」
等級1で耐えられる地震の1.25倍の強さの地震に耐えられる、ということです。

具体的な性能

学校や病院などの避難施設レベル
震度6強〜7の地震でも、建物の損傷を抑え、避難施設として機能できるレベルです。

どんな建物に求められるか

  • 長期優良住宅(最低基準)
  • 学校
  • 病院
  • 避難所に指定される建物

耐震等級2のメリット・デメリット

メリット
  • 等級1より地震に強い
  • 地震保険が30%割引
  • 長期優良住宅の基準を満たせる
  • フラット35Sの対象
デメリット
  • 追加コスト:+30万円〜60万円
  • 等級3より地震保険の割引率が低い
  • 熊本地震では損傷した建物もあった

耐震等級3とは

最高レベルの耐震等級3について、詳しく解説します。

耐震等級3の定義

「等級1の1.5倍の地震力に耐えられる」
等級1で耐えられる地震の1.5倍の強さの地震に耐えられます。

具体的な性能

消防署や警察署レベル
大地震後も、救助・復興の拠点として機能できるレベルの強度です。

なぜ等級3が注目されているのか

熊本地震の教訓

2016年の熊本地震では、震度7の揺れが2回発生しました。

  • 等級1の建物:多くが大きく損傷、倒壊も
  • 等級2の建物:損傷が見られた
  • 等級3の建物:ほぼ無傷

この結果から、等級3の有効性が証明され、注目が集まりました。

耐震等級3のメリット

地震保険が50%割引

等級3の最大のメリットの一つです。長期的には大きな節約になります。

圧倒的な安心感

大地震でもほぼ損傷しないレベルなので、家族の安全を守れます。

住宅ローンの優遇

フラット35Sで金利優遇(当初10年間-0.25%)が受けられます。

長期優良住宅に対応

長期優良住宅を目指す場合、多くの人が等級3を選択します。

資産価値の維持

耐震性能が高い住宅は、将来の売却時にも有利です。

余震にも耐えられる

本震だけでなく、余震が繰り返し来ても建物が耐えられます。

耐震等級3のデメリット

追加コストがかかる

等級1と比べて、+50万円〜100万円程度のコストアップ。

間取りの制約が出る

耐力壁を多く配置する必要があるため、大きな窓や開口部が取りにくくなることがあります。

設計・施工に高い技術が必要

すべての工務店・ハウスメーカーが対応できるわけではありません。

耐震等級1・2・3の比較表

視覚的にわかりやすく、3つの等級を比較してみましょう。

性能比較

項目 等級1 等級2 等級3
地震に対する強さ 基準レベル 1.25倍 1.5倍
大地震での損傷 大きく損傷する可能性 やや損傷 ほぼ無傷
相当する建物 一般住宅 学校・病院 消防署・警察署

メリット比較

項目 等級1 等級2 等級3
地震保険割引 なし 30%割引 50%割引
フラット35S 対象外 対象 対象
長期優良住宅 不可
追加コスト なし +30〜60万円 +50〜100万円

間取りへの影響

項目 等級1 等級2 等級3
間取りの自由度 高い やや制約 制約あり
大きな開口部 可能 要工夫 難しい場合も
吹き抜け 自由 可能 要検討

地震保険の割引率

耐震等級による地震保険の割引は、長期的に大きなメリットになります。

割引率

  • 等級1: 割引なし
  • 等級2: 30%割引
  • 等級3: 50%割引

実際の金額で比較

木造住宅(保険金額1,000万円)の場合:

年間保険料(東京都の例):

  • 割引なし:約25,000円
  • 等級2(30%割引):約17,500円
  • 等級3(50%割引):約12,500円

30年間の総額:

  • 割引なし:約75万円
  • 等級2:約52.5万円(22.5万円お得)
  • 等級3:約37.5万円(37.5万円お得)

等級3を取得するための追加コストが50万円だとしても、30年で考えれば十分に元が取れる計算です。

割引を受けるための手続き

必要書類:

  • 住宅性能評価書(設計または建設)
  • または、耐震等級を証明する書類

保険契約時に提出すれば、割引が適用されます。

耐震等級を上げる方法

では、実際にどうやって耐震等級を上げるのでしょうか?

1. 耐力壁を増やす

地震の横揺れに抵抗する壁を増やします。

必要な壁の量:

  • 等級1:基準量
  • 等級2:基準量×1.25倍
  • 等級3:基準量×1.5倍

2. 壁をバランスよく配置

壁が偏っていると、建物がねじれてしまいます。
偏心率を小さくする(0.15以下が望ましい)
建物の中心と、剛性(硬さ)の中心を近づけます。

3. 接合部を強化

柱と梁、土台と柱の接合部を、強固な金物で接合します。
等級が高くなるほど、強い金物が必要になります。

4. 床・屋根の剛性を高める

床や屋根を、構造用合板などでしっかり固めます。

床下地:

  • 等級1:構造用合板24mm
  • 等級2〜3:構造用合板28mm以上

5. 基礎を強化

鉄筋の太さを太くしたり、本数を増やしたりして、基礎を丈夫にします。

耐震等級取得にかかる費用

耐震等級を上げると、どれくらいコストが増えるのでしょうか?

構造部分の追加コスト

等級2の場合: +30万円〜60万円

  • 耐力壁の増加
  • 金物の強化
  • 構造用合板の増量

等級3の場合: +50万円〜100万円

  • 耐力壁のさらなる増加
  • より強固な金物
  • 基礎の補強

性能評価取得費用

耐震等級を証明するには、住宅性能評価を取得する必要があります。

  • 設計住宅性能評価: 10万円〜15万円
  • 建設住宅性能評価: 15万円〜20万円

合計で、25万円〜35万円程度かかります。

トータルコスト

  • 等級2: 55万円〜95万円程度
  • 等級3: 75万円〜135万円程度

ただし、地震保険の割引や住宅ローン優遇で、長期的には元が取れることが多いです。

耐震等級3は本当に必要?

「コストをかけてまで、等級3にする必要があるの?」という疑問にお答えします。

等級3をおすすめする人

地震リスクの高い地域

  • 南海トラフ地震の想定地域
  • 首都直下地震の想定地域
  • 活断層の近く

家族の安全を最優先したい人

  • 小さな子どもがいる
  • 高齢者がいる
  • 在宅時間が長い

長く安心して住みたい人

  • 長期優良住宅を目指す
  • 将来の資産価値を重視

地震保険に入る予定の人

  • 50%割引のメリットが大きい

等級2でも良い場合

予算が限られている

  • 30%割引でも十分なメリット
  • 長期優良住宅の基準は満たせる

比較的地震リスクが低い地域

ただし、日本全国どこでも地震のリスクはあります

等級1は避けるべき

熊本地震の被害状況を見ると、少なくとも等級2以上は取得することをおすすめします。
追加コストと安心感を比較して、長期的な視点で判断しましょう。

熊本地震での被害データ

実際の地震で、耐震等級によってどれだけ被害が違ったのか、データを見てみましょう。

熊本地震の概要

2016年4月:

  • 前震:震度7(4月14日)
  • 本震:震度7(4月16日)

震度7が2回という、観測史上初の事態でした。

耐震等級別の被害状況

国土交通省の調査結果

等級1(旧耐震基準含む):

  • 倒壊・崩壊:多数
  • 大破:多数
  • 小破・軽微:一部

等級2:

  • 倒壊・崩壊:なし
  • 大破:一部
  • 小破・軽微:多数

等級3:

  • 倒壊・崩壊:なし
  • 大破:ほぼなし
  • 小破・軽微:少数
  • 無被害:多数

データが示すこと

等級3の建物は、震度7が2回来ても、ほとんど無傷でした。
一方、等級1や旧耐震基準の建物は、大きな被害を受けました。
このデータは、耐震等級3の有効性を明確に示しています。

よくある質問

Q1. 耐震等級は後から上げられる?

新築時に設計・施工するのが最も効率的です。
後からの耐震改修でも等級を上げることは可能ですが、コストは新築時の数倍かかることもあります。

Q2. 木造でも等級3は取れる?

はい、取れます。木造でも鉄骨造でもRC造でも、等級3の取得は可能です。

Q3. 等級3にすると間取りが制限される?

耐力壁が増えるため、大きな窓や開口部は取りにくくなります。
ただし、設計の工夫次第で、希望の間取りを実現できることも多いです。
早めに構造設計者に相談しましょう。

Q4. 耐震等級と制震・免震の違いは?

  • 耐震: 建物を頑丈にして揺れに耐える(等級はこれを示す)
  • 制震: ダンパーなどで揺れを吸収する
  • 免震: 建物と地盤の間に装置を入れて揺れを伝えにくくする

耐震等級3に、制震装置を追加する人もいます。

Q5. ハウスメーカーによって等級3の強さは違う?

等級3の基準は共通なので、どのメーカーでも同等の強度です。
ただし、施工の精度や使用する材料の品質は、メーカーによって差があります。

Q6. 2階建てと平屋で等級3の難易度は違う?

平屋の方が、等級3は取得しやすいです。
2階建ては、1階が2階を支える必要があるため、耐力壁の量が多く必要になります。

Q7. 耐震等級を取得しないで建てることはできる?

はい、できます。住宅性能評価を取得しなければ、等級表示はされません。
ただし、建築基準法は守る必要があるので、実質的には等級1相当の性能は確保されています。

耐震等級取得の流れ

実際に耐震等級を取得するには、どうすればいいのでしょうか?

1. 設計段階で決める

最も重要なのは、設計の初期段階で「等級3を目指す」と決めることです。

2. 構造設計を行う

構造設計者が、耐震等級を満たす構造設計を行います。

3. 住宅性能評価機関に申請

設計図書を、登録住宅性能評価機関に提出します。
設計住宅性能評価を取得します。

4. 工事を行う

設計通りに施工します。

5. 中間検査・完了検査

評価機関が、現場検査を行います。

6. 建設住宅性能評価書の取得

検査に合格すれば、建設住宅性能評価書が発行されます。
これが、耐震等級の証明書になります。

7. 地震保険の申請

建設住宅性能評価書を保険会社に提出すれば、割引が適用されます。

まとめ:あなたに最適な耐震等級は?

耐震等級は、家族の安全を守るための重要な指標です。

耐震等級のポイント
  • 等級3が最も安全(等級1の1.5倍の強さ)
  • 地震保険が最大50%割引(等級3)
  • 追加コストは50万円〜100万円程度(等級3)
  • 熊本地震では等級3の建物がほぼ無傷だった
  • 長期的にはコストに見合うメリットがある
おすすめの選択
  • 予算に余裕がある → 等級3
  • 長期優良住宅を目指す → 等級3
  • 地震リスクが高い地域 → 等級3
  • 予算が限られている → 最低でも等級2

等級1は避けるべき: 追加コストをかけても、等級2以上を取得することを強くおすすめします。

地震はいつ来るかわかりません。家族の命と財産を守るために、できる限り高い耐震性能を確保しましょう。

信頼できる工務店や設計者と相談して、あなたに最適な耐震等級を選んでください。

関連記事

TOP